白髪染めをした日の夜、決まって頭皮がかゆくなる。生え際がピリピリして、放置時間の後半がつらい。それでも白髪は染めたいので、我慢して通い続けている。
この状態の方に、これまで何人もお会いしてきました。ほとんどの方が「体質だから仕方ない」と言われた経験を持っています。
この記事では、なぜしみるのか、どこで何が起きているのか、美容室側で減らせることは何か、自宅でできることは何か、そして皮膚科に行くべきなのはどういうときかを、順番に書きます。登戸で美容室をやっている私自身が頭皮が弱く、手荒れもひどいので、自分の身体で確かめたことを中心に書いています。
先に結論:しみる原因の多くは「残っていること」です
長くなるので先に書きます。
白髪染めでつらくなるタイミングは、大きく2つに分かれます。施術中にしみるか、帰ってからかゆくなるかです。
前者は薬剤が頭皮に触れていることが原因なので、薬剤選びと置いている時間で減らせます。後者は薬剤が頭皮に残っていることが原因なので、染めたあとの流し方で減らせます。
そして、後者の方が圧倒的に多いです。「美容室にいる間は何ともなかったのに、夜になってから」という方は、残留を疑ってください。
しみる・かゆくなる原因は3つに分けられます
一般的には、次の3つに整理されます。同じ人でも、日によってどれが効いているかが変わります。
1. 薬剤の成分による反応(かぶれ)
白髪染めに使われるジアミン系の染料に対して、身体が反応するケースです。これは体質によるもので、塗り方では避けられません。
特徴は、回を重ねるごとに反応が強くなることです。以前は平気だったのに最近つらい、という方はこちらの可能性があります。赤みや腫れ、湿疹を伴う場合は、美容室ではなく皮膚科の領域です。この記事の後半で改めて書きます。
2. 刺激によるもの
アルカリ剤や過酸化水素が頭皮に触れることで起きる刺激です。体質ではなく、触れた量と時間で決まります。
つまり、触れている時間を短くして、終わったあとに残さなければ、それだけで変わります。ここが美容室側で一番動かせる部分です。
3. 頭皮の状態によるもの
乾燥していたり、掻き傷があったりすると、同じ薬剤でも届き方が変わります。
前日に頭皮を掻いてしまった、という方は意外と多いです。小さな傷が一つあるだけで、感じ方はかなり違います。季節の影響も大きく、秋から冬にかけて乾燥する時期は、同じ施術でもつらくなる方が増えます。
私自身、薬剤で痛い思いをしてきました
ここで自分の話を書きます。読み飛ばしていただいても構いませんが、この記事の内容が机上の話ではないことの説明です。
私は手荒れがひどく、30代の前半に指の関節が割れて、水に触れると痛む時期が半年ほど続きました。薬剤を触るたびに痛い、というのが毎日でした。
そこで一つ分かったことがあります。私の手が痛いと感じる薬剤は、お客様の頭皮にとっても強い。いま書くと当然に見えますが、その頃は自分の皮膚が特別に弱いだけだと思い込んでいました。
そこから、使っていたカラー剤を全部見直しました。自分の手で触って痛くないものを基準に、片っ端から入れ替えました。基準が自分の身体なので、カタログの説明よりは信用できると思っています。
入れ替えたあと、しみるという声は目に見えて減りました。何年も通ってくださっている方から「前より楽になった」と言われたとき、素直に喜べませんでした。裏を返せば、それまではつらい思いをさせていたということだからです。
ついでに書いておくと、手荒れの方は今も続いています。寒くなる時期はほぼ確実に割れます。ただ、治らないままでいるおかげで、薬剤を選ぶときの物差しが甘くならずに済んでいる、とも思っています。
しみる場所には偏りがあります
「毎回同じところが痛い」という方が珍しくありません。分け目、生え際、つむじの周り、襟足。だいたいこのあたりです。
理由は単純です。そこが最も念入りに薬剤を塗り込まれる場所だからです。
白髪は根元から出てくるので、染め残しを避けようとすれば際まで塗ることになります。分け目や生え際は人目につきやすいぶん、どうしても手をかけて塗ります。きちんと染めようとするほど、薬剤は頭皮のすぐそばに置かれます。
きれいに染めたい側の事情と、頭皮を守りたい側の事情。この2つがぶつかるのが根元です。
襟足と耳の後ろは事情が少し違います。ここは自分で見えないので、流し残しに気づけません。シャンプー台で流すとき、薬剤は後ろに流れて溜まります。フェイスライン、耳の後ろ、後頭部の下。この4か所は、見落とされたまま流し終えられていることが本当によくあります。
流しただけでは、残ります
この記事でいちばん伝えたいのがここです。
カラー剤は、シャンプー台で一度流しただけでは頭皮に残ります。目に見える泡や色は落ちます。見た目にはきれいになっています。ただ、毛穴の中や生え際の際に入り込んだ分は、そのまま残っています。
残った分は、じわじわと頭皮を刺激し続けます。施術中ではなく数時間後に症状が出るのは、そのためです。かゆくなる時間帯が毎回だいたい同じ、という方は当てはまる可能性があります。
翌朝になってから気づくケースもあります。夜は疲れて寝てしまい、起きたら枕元に掻いた跡がある。染めた日の頭皮は敏感になっているので、寝ている間の数時間も刺激を受け続けています。
その時間をどう減らすかを考えたときに、帰る前に残りを落としておくのがいちばん確実でした。
当店の施術の中身を、順番に書きます
「痛くない白髪染め」という言葉だけでは中身が分かりません。当店が実際に何をしているかを、施術の流れに沿って全部書きます。
1. 刺激が少なく、色味がきれいなカラー剤を使う
低刺激の薬剤は、染まりが物足りないものも正直あります。そこを妥協すると、白髪が浮いて次の来店が早まり、結局は薬剤に触れる回数が増えてしまいます。
だから刺激の少なさと色味のきれいさが両立しているものを基準に選んでいます。新しい薬剤が入るときは、まず私の頭と手で使ってみてから店に入れます。
2. カラー剤を、刺激が少なくなるまでしっかり混ぜる
地味ですが、ここは効きます。カラー剤は、混ぜ方が甘いと刺激が強いまま頭に乗ります。
薬剤は2剤を合わせて作りますが、混ざりきっていない状態では成分が均一になりません。同じ薬剤を使っていても、混ぜ方ひとつで頭皮への当たりが変わります。
当店は、刺激が落ち着くまで時間をかけて混ぜます。ボウルの中で色が均一になってからが本当の準備完了です。ここを急ぐと、あとの工程を全部丁寧にやっても取り返せません。
3. 頭皮を傷つけない、やわらかいハケで塗る
見落とされがちですが、ハケの硬さは頭皮への当たり方を変えます。根元まで塗ろうとすると、ハケの先は必ず頭皮に触れます。硬いハケで何度も往復すれば、それだけで細かい傷になります。
先に書いたとおり、小さな傷が一つあるだけで薬剤の感じ方は変わります。塗っている最中に傷を作ってしまえば、その場で条件が悪くなります。やわらかいハケを使っているのはそのためです。
4. 放置時間をしっかり守る
置く時間は、短くても長くても良くありません。
短く切り上げると染まりが浅くなります。白髪が早く気になり始めて次の来店が早まるので、年間で見ると薬剤に触れる回数がかえって増えます。
逆に、忙しさにまぎれて置きっぱなしにすれば、そのぶん薬剤が頭皮に触れ続けます。時間を延ばしたからよく染まる、というものでもありません。
だから決めた時間を守ります。白髪の量と髪質から必要な時間を出して、そこで流します。当たり前のことですが、一人ずつ見ていないと守れません。
5. ぬるめのお湯で流す
熱いお湯は気持ちがいいのですが、頭皮の乾燥を招きます。染めた直後の頭皮は敏感になっているので、そこに熱を足すと刺激が重なります。
当店ではぬるめのお湯で流します。物足りなく感じる方もいますが、その日の夜のことを考えると、ここは温度を上げない方がいいと考えています。
6. 生え際の流しを徹底する
この記事で書いてきた「残る」の話が、いちばん現れるのが生え際です。フェイスライン、耳の後ろ、後頭部の下。この3か所は見落とされたまま流し終えられていることが本当によくあります。
時間をかけて確認しながら流します。時計を見ながら回している店では、まず削られる部分だと思います。
7. 低刺激のアミノ酸シャンプーで洗う
洗浄力の強いシャンプーは、汚れと一緒に必要な皮脂まで持っていきます。染めた直後の頭皮にそれをやると、乾燥してかゆみにつながります。
当店は低刺激のアミノ酸シャンプーを使います。泡立ちは控えめですが、洗った後の頭皮の落ち着き方が違います。
8. トリートメントでマッサージする
頭皮ケアと、ボリューム効果の期待できるトリートメントを使って、頭皮をマッサージします。
ごしごし洗うのではなく、毛穴の中から押し出すような動きです。指の腹で頭皮を動かしながら、残っている分を浮かせて流していきます。染めて終わりにせず、頭皮そのものを洗い流すところまでを一つの施術にしているのが、当店のいちばんの特徴です。
9. リラックスできる時間にする
ここは工程というより、結果として大事にしている部分です。
しみるのが怖い方は、施術中ずっと身構えています。いつピリピリが来るかと待っている状態は、それだけで疲れます。痛みが来ないと分かってくると、そこで初めて体の力が抜けます。
マンツーマンで、最初から最後まで担当が替わらないのも、この時間を切らさないためです。
なぜ他店がこれをやらないのか
この二段目を入れると、施術は一人あたり30分から40分長くなります。
その分だけ客数が減るので、席数の多いお店では組みようがありません。しかも、省いたところで染め上がりの色は何も変わりません。差が出るのは、帰宅してからの数日間だけです。
当店は登戸でマンツーマンでやっていて、人数を絞っています。その分、安い店ではありません。安さで選ばれる店にしない、と決めています。
効率で考えれば、最初に切り捨てる工程だと思います。それでも残しているのは、薬剤で痛い思いをした側だからです。関節が割れていた頃、薬剤が皮膚に残っている感じが一日中抜けませんでした。同じことが頭皮でも起きていると思った時点で、染めて流して解散、という組み立てが自分の中で崩れました。
つらくなりやすい3つの場面
放置時間の後半
塗り終えてから流すまでの待ち時間のことです。座り始めはなんともないのに、後半にかけてじわじわ落ち着かなくなる、という方がいます。
時間の経過とともに、薬剤が頭皮に触れ続けているからです。座って待っているだけなので周りからは何も起きていないように見えますし、言い出しにくい時間帯でもあります。
置く時間そのものは削れません。削れば染まりが浅くなって、次の来店が早まるだけだからです。できるのは、必要な時間を最初に見極めて、それ以上は置かないことです。
そのうえで、つらくなったら途中でも声をかけてください。黙って座っていられると、こちらは順調だと受け取ってしまいます。
二度塗り
一度塗った上からもう一度薬剤を重ねる工程です。生え際や分け目など、染まりにくい場所や目立つ場所に行います。染め残しを防ぐためなので、仕上がりとしては必要です。
ただ、頭皮の側から見ると、同じ場所に二回薬剤が乗ります。触れる量も時間も増えるので、そこだけ痛くなる方がいるのは構造として当然です。
当店では、毎回それが本当に要るかを判断しています。前回からあまり日が経っていなければ、伸びている量も少ないので一度で足りることがあります。決まりごとだからという理由でやる工程ではないと考えています。
リタッチの積み重ね
根元だけ染めるリタッチは、一回あたりの負担が小さく見えます。ただ、年に6回、10回と重ねていけば、同じ場所が繰り返し薬剤に触れることになります。
私が後処理を省かないのは、この蓄積の方が後々効いてくると見ているからです。その日一日の快適さより、何年か先の頭皮を基準にしています。
自宅でできること
一般論を並べても意味がないので、私が自分でやっていることと、実際にお客様にお伝えしていることだけ書きます。
染める前日と当日は、爪を立てて洗わない。ごく小さな傷が一つあるだけで、薬剤の感じ方は変わります。ここが一番差が出ます。
染める間隔を空けすぎない。伸びすぎてから一気に染めると、その分だけ塗る面積が増え、薬剤に触れる時間も長くなります。
染めた日の夜は、頭皮を触りすぎない。気になって掻いてしまうと、次回の施術時にその傷が効いてきます。
予洗いをぬるま湯で1分。これは普段の話です。私は以前、濡らしてすぐ泡立てて1分で流していました。その状態だと、どんなシャンプーを使っても同じです。シャンプーを替える前に、洗い方を見た方が早いです。私は5本分の遠回りをしました。
皮膚科に行くべきケース
ここは正直に書きます。美容室で対応できる範囲には限りがあります。
次の場合は、美容室ではなく皮膚科にご相談ください。
1. かゆみが数日続いている
2. 赤み、腫れ、湿疹が出ている
3. 顔やまぶたまで腫れたことがある
4. 回を重ねるごとに反応が強くなっている
これらは流し残しの話ではないので、こちらで対処できません。当店でできるのは、薬剤を残さないようにするところまでです。判断が必要なことは医師の領域です。
市販の白髪染めをどう考えるか
市販のものが絶対にだめだとは言いません。ただ、頭皮がつらい方には向きにくいとは思います。
理由は2つです。市販品は誰が使っても染まるように作られているので、薬剤の力が強めに設定されています。そしてもう1つ、自分で染めると流し切れているかを確認できないからです。
後頭部と襟足は、鏡を使っても自分では見えません。この記事で書いてきた「残る」の話が、一番起きやすい形になります。
この記事が向かない方
染めても何ともない方には、ここまでの工程は必要ありません。時間と費用が増えるだけです。そういう方には、正直にそうお伝えしています。
とにかく早く染めて帰りたい方にも向きません。工程が増えるぶん、確実に時間がかかります。
それから、しみない仕上がりをお約束しているわけではありません。薬剤を使う以上、刺激をゼロにすることはできません。その日の体調や頭皮の状態にも左右されます。当店がやれるのは、しみる要因を一つずつ取り除いておくところまでです。
よくある質問
Q. 毎回しみるのですが、もう白髪染めはやめた方がいいですか
A. やめる前に、やり方を変える余地があるかを見た方がいいと思います。施術中にしみるのか、帰ってからかゆくなるのかで対処が変わります。ただし、赤みや湿疹が出ている場合は先に皮膚科へ行ってください。
Q. 施術中に痛いとき、言ってもいいですか
A. その場で言ってください。黙って耐えられてしまうと、こちらは問題なく進んでいると受け取ってしまいます。当店は最初から最後まで私一人が担当するので、声をかけていただければすぐ手を止められます。途中で担当が替わらない形にしているのは、こうした小さな合図を取りこぼさないためでもあります。
Q. 二度塗りをしてほしくないのですが
A. 言っていただければ相談できます。染まりの見え方と兼ね合いになりますが、前回からの期間によっては一度で足りることもあります。
Q. どれくらいの間隔で染めるのがいいですか
A. 白髪の量と気になり具合によりますが、空けすぎない方が一回あたりの負担は軽くなります。逆に、時間を削って染まりが浅くなると次の来店が早まり、薬剤に触れる回数自体が増えます。そのあたりも含めてご相談のうえ決めています。
まとめ
白髪染めがしみる・かゆくなる原因は、体質だけではありません。薬剤の選び方、施術前の頭皮の状態、置いている時間、そして染めたあとに残っているかどうか。この4つが重なって決まります。
体質以外の部分は、変えられます。特に「残っている」の部分は、染めたあとの工程を足すだけで変わります。
私が染めて終わりにしない理由は、自分が薬剤の痛みを知っているからです。10年間ずっと耐えてきた、という方にも何人もお会いしました。痛みに耐えることは、白髪を染めるための条件ではありません。
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